アメリカでは連邦法とは別に州毎に法律を定める権利があり、ニューヨーク州にはニューヨーク州著作権法という法律が連邦著作権法とは別に存在する。
ニューヨークタイムズの言う法的措置がどの法律に基づくものなのかは不明。
利用規約に定めるということだが、少なくとも日本の法律では違法な利用規約は無効になる。
WIPO条約でも日本の著作権法でも、学術目的での著作物利用並びにデータとしてコンピュータに著作物を読み込ませる行為は、認められている。(※いわゆるAI学習というのはこのデータを読み込ませる行為に該当する。)
(但し、アメリカ連邦法やニューヨーク州法がどういう規定になっているかは、詳細不明。)
繰り返しになるが、著作権でアイデアや作風は保護されない。作成、或いはアウトプットされた現物だけが保護対象。これは著作権の大原則なのでどこの国でも一緒。
著作権侵害を主張するには、元の著作物の複製或いは流用であることを立証しなければならない。
演算せずにデータ転写しているような自称AIだと著作権が絡んでくる可能性があるが、現在メジャーになっている生成AIは内部的には演算をしているだけで、複製も流用もしていない。
そもそも、知的財産権は著作権だけではない。
箇条書きだけでも結構な長さになってしまった。
まず、ニューヨーク州法については、「そういう制度になっている」としか言い様が無い。
補足しておけば、日本の自治体が定める条例とは違って正規の法律であり、場合によっては連邦法の内容を上書きすることも認められている。(なので、よく連邦政府と州が訴訟になって、連邦最高裁の民主党系と共和党系の判事の数が問題になるのである。)
ただ、言うまでもなくニューヨーク州外では通用しない。
少し話がわき道に逸れるが。19世紀にはニューヨーク州法に聖書を勝手に出版してはいけないという規定があって、その為に独自翻訳した聖書を出版出来なかった男が隣のペンシルベニア州で会社を設立して自分の聖書を出版した、という事もあった。
ちなみに、その会社は後にカルト宗教団体に変貌して、今も世界中に蔓延している。日本では団体名をものみの塔聖書冊子協会といい、通称エホバの証人として知られている。
本当に余談なんだが。
つまりは、もしニューヨークタイムズが言う法的根拠がニューヨーク州著作権法なら、国外どころかニューヨーク州外の人間には関係の無い話だ、という事だ。
地域限定の話でしか無い。
なのだが、ニューヨークタイムズをジャーナリズムの最高峰と崇める人達は、冷静な反応が出来ていないようである。
元々AI絡みで騒がれ出した頃から、「著作権」上は何の問題も無いことを著作権の問題があるとかミスリードをしてきた界隈なので、この件では勉強不足なんだなあ、と言わざるを得ない。いくら文系の人達だからITには弱いとは言っても。
とは言え、さすがに指摘があったのか、最近は知的財産権という言い方に変えているところも多いが。
ただ、その場合でも「学問の自由とあなたの知的財産権、どちらが優先されますか?」という問い掛けに、私が見てきた限り誰一人答えていない。いや、問いかけが弱かったのかもしれないけど。
あと、これはジャーナリストに限った話では無いが、知的財産権とは言ってもその権利はまだ法律で保護されてないですよね? 今からですよね? というとこがわかっていない人がいる。
生成AIにかぎらず、いわゆる「パクリ」「盗作」という行為は知的財産権侵害とされるが、これらの殆どは「著作権侵害」では無い。
ちなみに、数少ない著作権侵害に該当する盗作の事例が、「俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長」事件である。ただこの件も、電撃編集部が平謝りして書籍回収して示談したので、法廷には持ち込まれていない。
他の法律が適用されるケースもあるが、何の法的保護も無くただ社会的慣行だけで縛っているものも多い。当然、社会の進展に伴って業界の外側の人間が入ってくれば、ルールなんて霧散する。
逆にJASRACのように、権利なんて存在しないのに請求書を送りつけて恫喝し、高額な金銭をふんだくる暴力団のような真似をする輩も横行している。
この辺をちゃんと法整備して、社会一般で通用する権利を作りましょう。という事を私は唱えているのだが。
それ以前に著作権や知的財産権の基本のキすら解っていない人間がデカいツラをしている現状では、これも随分と遠い未来になってしまうことだろう。
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