辺野古新基地予定地は陸上の辺野古崎と南東部の辺野古地先、それに北側の大浦湾に分かれており、とりわけ大浦湾は対岸にリゾートホテルが建つ観光地であることから当初より建設計画には猛烈な反対運動が展開されてきた。
参考:辺野古新基地で失業する人々
さらに、大浦湾を埋め立てるという事自体に、海洋生物への影響に懸念が示されていた。
それに加えて、大浦湾の海底の下にある地盤は強度がまるで無く、そのまま埋め立てても沈んでいくだけ、という事が判明した。そういう埋め立て地でどういう事が起きるのかという実例が、2018年の関西国際空港水没事件である。
これを受けて防衛省は、砂で作った杭を軟弱地盤に埋め立てる計画を公表した。当初は砂に製鉄で出るスラグ(くず鉄のようなもの)を混ぜる予定だったが、海が酸性化して死ぬという批判が出た為現在は杭の材料に何を使うかは公表されていない。また、当時の軟弱地盤の最大深度は水深70メートル程度とされていた。
関西国際空港水没事件の直後に行われた知事選では新基地反対派の玉城デニーが圧勝した。知事選は基地問題だけが争点になったわけでは無いとの声が出た為、翌年には辺野古新基地問題に絞った県民投票が行われ、ここでも新基地建設は否決された。
2019年には防衛省が追加のボーリング調査結果を公表し、軟弱地盤の最大深度は水深90メートルに及ぶことが判明した。
参考:軟弱地盤、最深90メートル 辺野古新基地・大浦湾側 識者「改良工事、例がない」
琉球新報 2019年2月7日 05:00
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-872176.html
しかし、防衛省は当初の軟弱地盤は水深70メートルという前提のまま再設計を進めて、工事変更申請を沖縄県に提出した。
沖縄県は変更申請を却下したが、国土交通省が代行で許可を出した為、沖縄県はこれを不服として訴訟を起こした。この訴訟の結果は最高裁が沖縄県の訴えを却下して終了した。
沖縄防衛局は辺野古新基地関連の工事を再開する意向で9/8に工事の公告を出す予定と伝えられているが、軟弱地盤埋立には関与しない部分とされている。また、軟弱地盤埋立計画は水深70メートル前提のまま変わっていない。
参考:
大浦湾埋め立てで工事8件発注へ 防衛局、沖縄・名護市辺野古の新基地建設で 未承認の県、対応問題視
沖縄タイムス 2023年9月6日 5:00
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1217428
県の承認後、大浦湾の地盤改良工事着手へ 防衛省 完成まで12年、事業費9300億円に
琉球新報 2023年9月5日 11:06
https://ryukyushimpo.jp/news/b/entry-1778803.html
ここで、以下のような要検証項目が洗い出される。
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最大で水深90メートルとされる軟弱地盤に、水深70メートル前提の杭を打ち込むことで対応出来るのか。
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杭の材料には結局何を使うのか。長さが増えるなら当然質量は大きくなるので、それも考慮しなければならない。
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杭を打ち込むこと、或いは杭の材料によって海洋環境に与える影響はどうなるのか。
これらの事項について、日本政府は何らの回答も示していない。検証実施中なのか検証着手すらしていないのかすらわからない。
こんな有様で、「科学的検証は行われました」などと、到底言えない。
にもかかわらず、工事を先に進めようとしている。
”処理水”の件で散々科学的科学的と言いながら、大浦湾埋立では科学的検証を行わない口にしないあまつさえ無視するとは、一体どういう事か。
まさか、「福島と沖縄では適用される物理法則が違います」とでも言い出すつもりか。
(言うまでも無いが、そんなわけは無い。)
このような欺瞞に満ちた非科学的なことを続けていれば、行政も政治もどんどん信頼を失っていくことだろう。
その先に待っているものが何かは、さすがに私にはわからないが。
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